原料のこと

● 米の話

八ツ橋は、お米と砂糖だけで出来たお菓子です。お米の質が、八ツ橋という菓子の品質の大部分を決定するといっても過言ではありません。
でき上がりました生地の、色や風味はもちろん、柔らかさ・ねばり・歯ざわり・腰(こし)の強さ、更に保存性(どの位の期間同じ状態が保てるか)など、ほとんどの品質が左右されます。
八ツ橋づくりは、そのお米を製粉することから始まります。

ところで、米(稲)を食料とする場合、大きく分けて2つの区分があります。ひとつは、粒で食べるか粉で食べるかという区分、もうひとつは、稲の種類として、モチ(糯)米かウルチ(粳)米かということです。ここでは製粉された菓子材料としての米粉を、見て行くことにしましょう。

まず「ウルチ米」とは、ササニシキやコシヒカリなど、ごはんとして日常食べているお米です。「ウルチ米」と「モチ米」との違いは、澱粉をつくる成分であるアミロースとアミロペクチンとの含有量の差にあります。「ウルチ米」の澱粉には、この二つが1対4の割合で含まれており、「モチ米」の澱粉にはアミロースがほとんど含まれておりません。「モチ米」はほとんどアミロペクチンのみで構成されているため、「粘り」が強いのです。

 

● ウルチ米を原料とした粉
◯上新粉 ウルチ米を水洗いしたのち乾燥させて粉にしたもの。団子や柏餅や草餅などに使われる。
◯上用粉 上新粉を更に細かく粉にしたもの。薯蕷饅頭や蒸菓子、八ツ橋に使用される。
◯かるかん粉 ウルチ米を水洗いしたのち半乾きにしたものを砕いて荒く粒状にしたもの。「かるかん」に使用される。
● モチ米を原料とする粉
◯白玉粉 モチ米を水洗いして水浸けしたのち石臼で水びきする。
これに多量の水を加えて撹拌し、沈澱をくりかえして水晒して脱水したのち、細かく切って乾燥させたもの。
主に求肥に使われる。
◯もち粉 モチ米を水洗いし脱水したのち製粉し乾燥させたもの。
粉質によって羽二重粉・求肥粉と呼び分ける。
主に、求肥や大福餅に使われる。
◯道明寺粉 モチ米を水洗いし水浸けしたのち、蒸し乾燥させて小さく砕いたもの。三ツ割・四ツ割・八ツ割など、目の粗さによって何段階かに分かれます。
◯みじん粉 モチ米を水洗いし水浸けしたのち、蒸して搗いて餅に(寒梅粉)し、焼いて煎餅にして粉砕したもの。主に打菓子として使います。

 

八ツ橋は、上用粉を使います。粒度の分布や含水量・保水性などが、季節により微妙に異なる仕様が要求され、最も苦労するところです。
そしてこの上用粉の品質に応じて「加水量」「蒸し時間」などを調整するのが、生産工程での大きな課題です。

● 古代米
 およそ七千年以上昔、お米は白いものの他にも、赤や黒、緑と実に色とりどりの種類がありました。その一部が約三千年ほど前(縄文期)に日本にも伝来しました。邪馬台国の卑弥呼は「赤米」、秦の始皇帝は「黒米」を食べていたのではないかと推測されると、見た目もしかりで、たちまち古代米に興味が湧いてきませんか?
 「赤米」とは、米のぬかや胚芽の部分に赤色系色素が定着したもので、現在の赤飯はこの赤米に由来しているとの説があります。「黒米」は赤米の中で特に黒紫色のものをいいます。また、「緑米」とは、古代米各種のうちで最も野生稲に近いものです。他に、「香り米」という品種もあり、これは玄米の香りが強いイネの品種ですが、普通の米にごく少量を混ぜて炊くと、おいしい新米の香りが漂うといわれます。

 これら古代米は、白い米に押されて、やがて栽培されなくなっていきますが、赤米だけが宗教伝承でわずかばかり残っていました。
 それを、京都の祇園で米穀店を営む梶原慶三さんが「現代の食」として復元しました。梶原さんが初めて「赤米」を見たのは、一九八〇年代初めのこと。氏神である八坂神社の宮司より、奉納したいから探してほしいと依頼を受けたのがきっかけです。栽培地は意外にも近く、丹後の弥栄町で見つかりました。そこは、奈良に出土した木簡に「赤ごめを産する」と書き記される地で、有志たちが郷土の誇りとして育てていたのでした。そして、その種籾をたどれば、縄文の稲作跡がある岡山県総社市の国司神社の神田で栽培されていた米へと行き着きました。他に赤米の伝承地としては、長崎県の多久頭神社と鹿児島県の豊満神社が挙げられます。
 梶原さんは、丹後で譲り受けた種籾を丹波にある八坂神社の神田にまき、五俵ほどの収穫を得ます。ところが、奉納には二、三升あればよく、あとの残りは商人の知恵で売ることにしました。昭和天皇在位六十周年の祝いに重ねて売り出したところ、予想以上の反響。その後、次々に古代米が商品化されました。
 古代米は、コシヒカリなど程には改良が進んでおらず、野生稲に近いだけに農薬や化学肥料を受け付けない性質があります。栽培の技術も野生に近いだけ難しく、自ずと手づくりになり、収量も大幅に少ないのが現状です。
それでも、古代米には、「ハレ」の日の食べ物として、また古代ロマンを存分に味わえる点でたいそう魅力があります。さらに特筆すべきことは、栄養価が高く、健康にもよいことです。ビタミン・タンパク質・繊維・鉄分・カルシウムを多く含み、中国でも、二千五百年の昔から、医食同源の本格派薬膳料理に欠くことのできない米として重宝されているそうです。
赤ごめ
黒ごめ

梶原米穀のホームページ


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